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人材特集2020
 印刷 2019年03月13日デイリー版2面

MariTech 海事未来図】(10):川崎汽船/K-IMS核に事業変革

佐々木氏
佐々木氏
亀山氏
亀山氏

 川崎汽船は中期経営計画の重点課題の一つに「機能別戦略の強化」を掲げている。その一環で、「技術革新・ビジネスモデル変革による高品質サービスの追求」と「カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)強化」に取り組んでいる。

 この取り組みをさらに前に進めるために、1月1日付で「AI・デジタライゼーション推進室」と「マーケティング戦略室」を設置した。

 IoT(モノのインターネット化)やAI(人工知能)をはじめとするデジタル技術を活用し、海運・物流サービスの付加価値を高める。それにより、新たなビジネスモデルの構築を目指す方針だ。

■専門組織を改編

 「マーケティング戦略室が中心となって多様化する顧客の課題やニーズを掘り起こし、ビッグデータなどデジタル技術を活用してソリューションを提供する。それが新しいビジネスモデルとなり、差別化ツールとなる」

 佐々木丈一理事(工務担当兼船舶・先進技術・造船技術・環境ユニット統括役員付)は、今回の組織改編の狙いについてそう語る。

 デジタル技術の利活用を促進する上で鍵を握るのが、川崎重工グループと共同開発した統合船舶運航・性能管理システム「K-IMS(Kawasaki-Integrated Maritime Solutions)」になる。

 K-IMSは運航データ収集・監視システムを核に、パフォーマンス解析システム、最適運航システムを統合した包括的なシステムを指す。安全運航管理の高度化と経済運航を追求するために開発した。K-IMSを搭載することで、陸上から本船の運航支援や性能管理がより充実する。

 本船が装備するデータロガーや航海情報記録装置(VDR)、モーションセンサーなどで取得した各種運航データを、船陸間通信を介して陸側に自動で送信。収集したビッグデータを「K-IMSビューワー」と名付けたインターフェースで加工・表示し、運航状況や機関プラントの状態をリアルタイムでモニタリングする。

 K-IMSを導入する前は、運航データの取得は船陸間通信の制約から1日1回に限られていた。導入後はデータ取得の頻度が30分に1回と導入前の48倍に増えた。短期間に大量のデータを収集できるようになったことで、燃費性能などパフォーマンスの解析精度が格段に上がった。

 船長の航路選定の判断をサポートする最適運航システムは、2010年に実船試験をスタート。熟練海技者の経験と知見を基に、ロジックの組み立て方の改良を重ねてきた。16年に自動車船、コンテナ船、バルカーに搭載し計120航海を解析。平均3・5%の燃費節減効果を確認し、採用を決断した。

■見せ方に工夫

 亀山真吾先進技術グループ長(機関長)は、「インターフェースが肝になる」と語る。

 本船のコンディションは、陸上の船舶管理監督と営業部門のオペレーション(運航)担当者がモニターで常時監視する。運航や機関プラントの状態を的確に把握するには、データをどのように可視化するかが重要になる。

 インターフェースづくりは海技者のノウハウをベースに営業担当者の要望も組み入れ、同社オリジナルのシステムに仕上げた。「顧客ニーズを反映させるなど自在にカスタマイズできる」(亀山氏)ことが売りだ。本船で同一画面を見られることも特長だ。

 K-IMSは2月時点で、自社管理船を中心に一部用船も含め113隻に搭載。最適運航システムの搭載まで終えたのはそのうちの62隻だが、同システムも自社管理船全船に順次搭載していく計画となっている。

■用船にも搭載

 川崎汽船はK-IMSのさらなる高度化を目指して、最適運航システムの精度向上に取り組んでいる。そのほか船底汚損評価システム、最適トリムシステム、機関状態診断システムなどのアプリケーション開発にも取り組んでいる。

 「ICT(情報通信技術)を駆使して、パートナーと共に故障やトラブルを未然に防ぐ仕組みを構築したい」と佐々木氏は語る。

 定期用船している船舶にK-IMSを広げることも課題になる。「貨物を安全に輸送し、船質を良好な状態に保つことができることは、お客さまからの高評価を得ることにつながる。今後、船主にとっても具体的な利点を示す」(亀山氏)ことで理解を求めていく。

 川崎汽船は00年代初頭にアブログデータを電子化するなど、デジタル技術を他社に先駆けて活用してきた。同社に根付く進取の気性を発揮し、デジタライゼーションの取り組みにも弾みをつける方針だ。