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 印刷 2019年03月06日デイリー版2面

MariTech 海事未来図】(9):損保ジャパン日本興亜/AIで外航保険設計

■800万件データ分析

 国際貿易で海上・航空輸送される貨物はその荷姿・ルートを問わず、輸送中の事故、荷役・保管時の荷扱いによるダメージ発生など、さまざまな損害リスクにさらされている。このリスクをカバーする外航貨物海上保険は、円滑な貿易業務遂行に欠かすことができない保険商品だ。

 外航貨物海上保険は顧客・輸送案件ごとにテーラーメイドの提案が可能で、一般の保険と比較して商品設計の自由度が高いことが特色。一方で、自由度が高いために商品設計には一定の経験・知見が要求され、人材育成にも時間がかかる。また利用者への聞き取りから実際の見積もり提示までの時間に数日を要するなど手間がかかる商品だ。業界大手の損保ジャパン日本興亜によると、代理店など販売現場からは「売りにくい」という反応も強かったという。

 国際貿易の裾野の広さを考えれば、外航貨物海上保険の潜在的なマーケットは大きい。同社・海上保険室ではさらなる需要掘り起こしのため、迅速な料率提示が必要と判断。AI(人工知能)を活用した迅速な商品設計・見積もり設計のためのツール開発に着手した。

 グループ会社のSOMPOリスクマネジメントが開発したAIを活用。これまで蓄積した約800万件のデータを分析し、事故発生率や求償額などを予測。品目、仕出し地・仕向け地、貿易取引条件(インコタームズ)など必要項目を入力すれば、AIの分析を基に瞬時に見積もり額を提示できる仕組みで、10月から本格的にリリースする予定だ。

 24時間対応可能な新ツールにより、利用者の利便性が向上。さらに、営業部門が持っていた外航貨物海上保険への苦手意識を払拭(ふっしょく)。主に中小企業をターゲットに、新規開拓を推進する。

■「アマゾン」型提示

 商品設計の難しさの一つに、主契約に含まれない例外的な事項をカバーする「特約」がある。

 損保ジャパン日本興亜では、汎用(はんよう)的な特約を約100種類に類型化している。さらに、AIツールはEC(電子商取引)世界最大手アマゾンを参考に「サイトを通じて購入すると関連商品が提示されるように、条件に合った特約をお薦めするような機能も持たせる」(海上保険室貨物保険グループ)ことで、利用者が適切な特約を選びやすくする工夫を凝らす。また特約は通常英語表記だが、日本語訳のページも別途準備し、利用者の理解を深める。

 海上保険室で料率設定など外航貨物海上保険の商品づくりに関わる専門の人員はわずか数十人。「AIツールで見積もりからクロージング(最終契約)までできれば理想形だが、細かい要望への対応など当面は人的サポートが必要」(同)。また大企業は引き続きテーラーメイドでの商品設計が必要となる。さらに、AIツールで新規開拓が進めば、商品設計に関わる業務は増える可能性もある。

■新技術に積極対応

 損保ジャパン日本興亜は、銀行、商社、船社などと共に、NTTデータが事務局を務める業界横断型のコンソーシアムに参画。ブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用した貿易情報連携基盤の構築に関与するなど、貿易分野でのイノベーションに積極的に対応している。

 外航保険分野でも、AIツールの導入を契機にさまざまな展開を模索している。将来的には、申し込み手続きや保険証券発行のためのシステム「マリン・マイ・ページ」(MMP)と連動させ、申し込みまでシステムでの一元処理も視野に入れている。

 また現在は免責事項となる輸送遅延なども保険でカバーできないか、新たなテクノロジーを活用した新商品の開発なども検討していく。

(週1回掲載)