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 印刷 2019年02月13日デイリー版1面

MariTech 海事未来図】(6):港湾の完全電子化/「周回遅れ」一気に挽回なるか

昨年11月のサイバーポート推進委員会の初会合
昨年11月のサイバーポート推進委員会の初会合

 古くて新しい問題である港湾諸手続きの電子化。官民の関係主体が多岐にわたることなどから、依然としてファクスなどによる情報伝達が残る同分野だが、政府主導による完全電子化が大きく進む公算が大きくなってきた。最新のITを駆使しながら従来と異なる発想で港湾関連データの連携基盤を構築する取り組みが本格化。2020年末の本格運用開始という政策目標が定められ作業が急ピッチで進む。港湾の利便性・生産性を高める「切り札」となるか、注目を集める。

■サイバーP着手へ

 国土交通省は昨年夏に策定した港湾の新しい中長期政策の柱の一つに、港湾・貿易手続きに関するさまざまな情報を電子的に接続し、連携させる「港湾関連データ連携基盤」の構築を通じた港湾の完全電子化を盛り込んだ。また、昨年6月に閣議決定された政府のIT新戦略では、データ連携基盤を20年までに構築するとのスケジュールが明確化された。

 11月には内閣官房IT総合戦略室と国交省港湾局が連携し「港湾の電子化(サイバーポート)推進委員会」が発足。実務者会合の「サイバーポート検討ワーキンググループ」も昨年12月に設置され、作業が本格化した。

 今後物流関係団体、経済団体、荷主関係団体、港湾管理者、港湾運営会社、関係省庁が議論を交わし、今年度末ごろまでに連携基盤の基本仕様を固める。19年度にもプロトタイプ(試作システム)の開発に着手する。

■連携進まず失敗も

 港湾物流諸手続きの電子化では、かつて苦い失敗の経験がある。国交省港湾局は04年、主要港の港湾管理者と共に「JCLネット」(日本コンテナ物流情報ネットワーク)の開発に着手、翌05年にサービスをスタートさせた。ターミナルオペレーター、海貨、陸運の3者がコンテナ搬出入情報、搬出可否情報照会、入退場トレーラー管理などの情報活用を可能にするため、システムの試験運用を開始した。

 将来的には電子商取引(決済)機能も抱合した物流情報プラットフォーム実現を目指した取り組みだったが、ターミナルオペレーター側の自社のターミナルシステム改修が初期投資コストの問題で順調に進まず普及が低迷。主要港の一部コンテナターミナルだけでの運用にとどまり、当初予定していた有料サービス化や民間主体による自立的な運営に移行できないまま08年9月末でサービスを停止した。

 国交省はその後、仕切り直しの形で10年に「Colins」(コンテナ物流情報サービス)を開発・運用開始。輸入コンテナのCY(コンテナヤード)搬出可否や船舶動静、港頭地区の混雑状況のカメラ画像などの提供などを主要港・一部地方港で展開している。だが他の物流情報システムとの連携や完全電子化といった課題は依然として残っていた。

 「過去の取り組みは各論で関係者間の調整が進まず十分な成果が得られなかった」。昨年11月のサイバーポート推進委初会合で下司弘之港湾局長はかつての港湾情報化施策をこう振り返った。下司局長は港湾諸手続きのシングルウインドー化を推進する担当室長を務めた経験もあり、港湾諸手続きの電子化に造詣が深い。それだけに「サイバーポート」実現に向け不退転の決意で臨む考えを会見などで再三表明するなど思い入れは強い。

■APIで基盤構築

 今回の「サイバーポート」が従来の取り組みと大きく異なるのが、特定のサーバーにデータを集中させるスタイルではなく、自立分散型の連携基盤をクラウド上に構築する点にある。その要となる技術は、個別のソフトウエアの機能を共有する入出力インターフェース「API」にある。

 ニュースサイトの記事に、別のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のコメントとして利用者が投稿できる。こうしたシステム・ソフトウエアの横断的な機能を提供するのがAPIだ。APIを活用し、荷主、物流事業者などが個別に所有・運営するシステムを大規模に改修することなくクラウド上でデータを連携させ、関係者が港湾諸手続きに関する情報を共有できるようにする。

 同種の連携基盤は農業分野で実用化にこぎ着けており、農業と同様に関係者が多岐にわたる港湾物流分野でも、完全電子化に向け大きく前進する可能性を有している。

 その一方で、内閣官房が全体を統括し、20年末という期限を切って進められることに対し、過去の経緯を踏まえながら拙速に進むのではないかとの不安もまた、物流関係者を中心に存在する。世界的に見て周回遅れとさえ言える日本の港湾諸手続きの完全電子化が一気に挽回を図ることができるか。今年は日本港湾の将来を左右するヤマ場の年となる。(週1回掲載)