印刷 2019年02月06日デイリー版2面

MariTech 海事未来図】(5):商船三井/ICTの中核プロジェクト

久嶋氏
久嶋氏
芦田氏
芦田氏

■「FOCUS」始動

 商船三井は昨年10月、船舶運航ビッグデータを活用するための「FOCUS」プロジェクトを立ち上げた。ICT(情報通信技術)の利活用に向けた中核プロジェクトと位置付け、安全運航管理体制の強化や環境負荷の低減につなげる考えだ。

 商船三井は経営計画「ローリングプラン」の中で、全社的な強化項目として「海技力」や「環境」などと共に、「ICT」を掲げている。

 ICTの強化に向けた具体的な取り組みとなるのが、三井E&S造船、ウェザーニューズと共に手掛ける「FOCUS」プロジェクトになる。

 プロジェクト名は、フリート・オプティマル・コントロール・ユニファイド・システムの頭文字に由来する。

 同プロジェクトでは、洋上を航行する本船からさまざまなデータを収集。それらを船陸間通信を介して陸上に送信して、クラウド上に構築するデータプラットフォームに蓄積する。

 蓄積した運航データに、航海日誌や整備記録のデータも加味して解析し、船舶管理の高度化や推進性能評価の精度向上などに役立てる狙いだ。

■150隻にソフト搭載

 運航データの収集・送信ソフト「フリート・トランスファー」は、三井E&S造船が新開発した。拡張性が特長で、センサーを追加設置し収集するデータの種類を増やしたい場合などに、フレキシブルに対応できる。高頻度に取得データを送信できるため、本船の状態も詳細に把握できる。

 商船三井は、昨年10月に竣工したLNG(液化天然ガス)船「マーベル・イーグル」に「フリート・トランスファー」を試験搭載。今春以降、約150隻の自社管理船全船に順次搭載していく計画だ。

 「FOCUS」プロジェクトでは、取得した運航データをいかに活用するかが鍵を握る。そのためのアプリケーションについては、「フリートビューワー」と「フリートパフォーマンス」という2つのソフトの開発を進めている。

 「フリートビューワー」は機器モニタリングアプリケーションで、本船の位置情報や海気象情報、主機関の回転数や排ガス温度などのトレンドグラフを表示。陸上でも、あたかも船内の機関制御室にいるかのように、本船の機器の状態が手に取るように分かる。

 経験豊富な船舶管理監督が「フリートビューワー」で機器の状態を陸上からチェックする。早期に不具合の兆候を発見できる可能性が高まるほか、不具合などの発生時もより的確かつ迅速にアドバイスできるようになる。

 「熟練海技者がどのような視点で故障や不具合の兆候を読み取っているかという、当社のノウハウをデータ化し共有することも可能になる」と、スマートシッピング推進部スマートシップ輸送チームの芦田哲郎サブチームリーダーは語る。

 商船三井は“船長を孤独にしない”を合言葉に、2007年に本社内に「安全運航支援センター」(SOSC)を設置。24時間365日体制で本船を陸上からサポートしている。

 スマートシッピング推進部スマートシップ輸送チームの久嶋隆紀チームリーダーは、「『フリートビューワー』は機関系版SOSCともいえる」と語り、船陸一体で安全運航管理体制の強化を目指す方針を示した。

 「フリートパフォーマンス」は就航解析アプリケーションで、実海域での本船の推進性能をリアルタイムで高精度に把握するアプリになる。今年10月の運用開始を目指している。

 同アプリは、特に減速航海時の推進性能評価の精度向上が期待されている。性能評価の精度が上がれば、入渠のタイミングや、船底やプロペラのクリーニングの必要性を的確に判断できる。最適な出力調整や省エネ対策の評価も可能になる。

 将来的には「FOCUS」プロジェクトをベースに、貨物管理の高度化や故障予兆診断技術による状態基準保全(CBM)の実現を目指す。さらに、本船の画像・映像を船陸で共有する洋上の見える化、AI(人工知能)を活用した運航の最適化など、運航データを活用したアプリの拡充を図る。

(週1回掲載)