印刷 2019年01月30日デイリー版2面

MariTech 海事未来図】(4):HSBC/電子書類で効率化

電子書類
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■Bチェーン活用

 仮想通貨などの分野で注目を集める「ブロックチェーン」(分散型台帳)技術が、海上輸送や貿易分野の業務効率化にも大きく貢献しそうだ。

 国際貿易では船荷証券(BL)や信用状(LC)、インボイス(送り状)などさまざまな書類が必要だが、郵送や情報の突き合わせなどに時間がかかるため、電子化ニーズは高い。しかし、貿易書類は国・業種をまたぎ、非常に幅広い関係者の間でやりとりされるため、単一システムでの電子化が困難、もしくは非常に高いコストがかかっていた。

 これに対し、ブロックチェーンはデータの改ざんが難しく、ネットワーク上の参加者が同時に変更などを共有可能でトレーサビリティ(追跡可能性)が高いなど、貿易書類の処理に適した特性を持っている。このため、同技術を活用した貿易電子化プロジェクトが複数進行している。

 英金融最大手HSBCグループは貿易書類電子化で昨年来、ブロックチェーン技術の活用を加速している。HSBCが特に注力しているのがLCの電子化。LCは、輸入者の代金支払いを輸入者側銀行が保証する書類。新興国との取引や中小企業などにとっては銀行保証は大きなメリットだが、一方で書類の確認作業に多くの人員・時間が投じられている。

 HSBCなど欧米アジア十数行によるコンソーシアムは、ブロックチェーンに強みを持つIT企業R3の「コルダ」を基盤とする情報プラットフォーム「ボルトロン」(Voltron)を整備している。18年は穀物や化学品などの取引で、複数の実証実験を実施した。LCの受け渡し、確認では通常1週間から10日間を要するが、昨年5月に行った南米発マレーシア向け大豆輸送での実験では、24時間以内に処理が完了したという。

■BLも一体処理

 また、1990年代からBLの電子化に取り組んできた欧ボレロとも提携。電子BL(eBL)も同一プラットフォーム上で処理できる体制とした。昨年11月には、蘭金融大手INGと連携し、印複合企業リライアンスの米向け化学品輸出で貿易書類の電子化を手掛けた。輸入者はトライコン・エナジーで、LCからBLまで一連の貿易書類をオンラインで処理。同実験でも書類の移転・確認は1日以内で完了したという。実際の貿易代金の決済は、金融機関の国際団体SWIFTを通じて実施した。

 HSBCによると、ボルトロンは19年中に商用化する方針。コンソーシアムでは、引き続き参加行を募っている。

■貿易促進に貢献

 HSBCは輸出入を伴う貿易だけでなく、国内取引など商流の電子化にも取り組んでいる。

 HSBCなど香港主要金融機関は昨年、香港金融管理局の支援を受けてブロックチェーンを基盤とする商流プラットフォーム「イートレードコネクト」(eTC)を始動させた。

 先ごろ実施した実証実験では、オープンアカウント(送金取引)を対象に、PO(発注書)やインボイスを電子化した。加えて、貿易取引相手の本人確認を参加銀行が証明することにより、売り手・買い手は実際の取引を証明し、銀行から融資が受けやすくなる。また銀行側は書類の偽装など不正な融資申し込みや、二重申し込みなどを避けることができる。与信・ガバナンス(法令遵守)の観点からも電子化の効果は大きい。

 欧州では、HSBCを含む有力金融機関とIBMなどによる「we.trade」というプラットフォームが立ち上がっている。eTCと同じ、「ハイパーレジャー」というブロックチェーンプラットフォームを利用しており、長期的にはeTCとの連携の可能性もある。

 HSBCは、18年からの3年間でフィンテックを含む成長分野に150億-170億ドルの投資を行う方針。スタートアップとの連携なども多く、新技術採用には積極的だ。

 フィンテックの一部である貿易金融分野でも、新技術により業務の電子化・効率化を進め、顧客のコスト削減や大幅な処理時間短縮を実現。貿易の拡大、促進に貢献していく。

 (週1回掲載)