印刷 2019年01月16日デイリー版2面

MariTech 海事未来図】(2)/ビッグデータ安全活用

18年5月の第1回コンソーシアム総会前に開かれた関係者による記者会見
18年5月の第1回コンソーシアム総会前に開かれた関係者による記者会見

■IoS-OP始動

 船上の各機器にセンサーを取り付け、それにより得られる大量な情報をビッグデータ化することで、AI(人工知能)による解析やイノベーション、高付加価値サービスを創出し、日本の海事クラスターの競争力強化を目指す取り組みが本格化している。これを実現するための共通基盤となるIoS(インターネット・オブ・シップス)-OP(オープン・プラットフォーム)が2018年、本格稼働した。

 IoS-OPは、海事業界内で合意されたルール(IoS-OP利用規約)と、データセンター(システム基盤)で構成。船上で得られる膨大なデータを、データ提供者の利益を損なわずに、ステークホルダー間での共有や造船所・舶用機器メーカーなどへの利用権販売、そのデータを解析することなどで各種サービス創出を目指す。

 当初は、自社建造船の性能確認など、造船所などによる利用を見込み、将来的にはトリム(船の前後方向の傾き)・運航経路などの最適化、燃料節減、モニタリングなど運航効率化につながる新たなアプリ開発などを想定。さらに、海事分野だけでなく他の産業での活用も見込む。

 IoS-OPで、陸上での安全なデータ保管とアクセス制限付きデータ供給の業務を担う日本海事協会(NK)の子会社シップデータセンター(ShipDC)の池田靖弘社長は、「データ共有事業は他業界よりも進んでいるが、データ収集・活用に関するステークホルダーを整理・役割を定義し、目的、責任、義務を明確化した上で、合意されたデータ流通ルールを策定しているOPは、聞く限り世界では類を見ない活動」と語る。

 IoS-OPでは、ステークホルダーは、ShipDCのほか、PU(プラットフォーム・ユーザー)、PP(プラットフォーム・プロバイダー)、DB(データ・バイヤー)、SP(ソリューション・プロバイダー)、SU(ソリューション・ユーザー)に分類される。

 PUは、船上装置など費用を負担しデータ収集に貢献する船主、オペレーター、船舶管理会社など。PPについては、船上のデータ収集装置販売者や船上データ収集事業者などが対象となる。DBは、自社製品へのフィードバック用にデータを購入する造船所や舶用機器メーカーが当てはまる。SPは、データを活用した分析、解析などで高付加価値サービスを提供する事業者。SUは、SPのサービスを利用する船主、オペレーター、船舶管理会社、船員などとなる。

■会員55社に膨らむ

 IoS-OPの会員企業によるコンソーシアム組織は海運、造船、舶用工業、情報通信など46社を初期会員として発足。18年12月27日時点で、計55社に膨らんでいる。

 IoS-OPコンソーシアムは、最重要事項の決議を担う総会の下に、コンソーシアムの運営方針などを決めるステアリングコミッティを設置。その下にサブコミッティ(運営方針に関する検討、提言など実施)、さらにその下にワーキング・グループ(WG)を置く。WGは現在、ルール策定・データガバナンス策定、ソリューション、ビジネス開発-の3WGが活動している。

 足元では、収集された船舶データの流通に関するルール制定が完了。データの利活用について議論が進む。昨年10月には、会員企業向けの通信テスト基盤「IoS-OPテストベッド」もNKの情報技術センター(千葉市)内に設置された。陸上で、各種データ収集装置と船上アプリケーションとの接続確認試験ができるほか、船陸衛星通信によるブロードバンド接続や送受信テストなどを実施することができる。

■対象船拡大が課題

 今後の課題の一つは、データ収集対象船の隻数拡大。現時点で、利用可能なデータ(センサーデータ)は50隻分にとどまる。ShipDCでは、今春までには100隻レベル、20年には550隻規模と今後さらに増えることを見込む。