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人材特集2020
 印刷 2019年01月08日デイリー版1面

MariTech 海事未来図】(1)/産業革新、デジタルの海へ

デジタル革命が海事産業を大きく変えようとしている(イメージ)
デジタル革命が海事産業を大きく変えようとしている(イメージ)

 デジタル革命が海事産業を大きく変えようとしている。ビッグデータを活用した安全強化や運航最適化、AI(人工知能)による市況分析、自律運航技術の開発をはじめ、デジタルプラットフォーム上での協業が深度化。本紙では、海事クラスターの技術革新を「MariTech」(マリテック、Marine+Technology)と名付け、連載シリーズをスタートする。第1回は邦船大手や欧州海運のキーマンの言葉をひもときながら、海のIT革命の可能性を展望する。

 「これまでも船の中にデータは存在していたが、発生しては消えてしまっていた。しかし、衛星通信の速度向上で船から陸へのリアルタイム送信が可能となり、船のビッグデータ活用が実現しつつある」

 海運大手の機関系海技者はそう語る。

 海上のネット環境は陸上からほぼ20年遅れているといわれ、現在の船舶通信スピードは陸で言うと2000年前後の2G(第2世代移動通信システム)レベル。ちょうどブロードバンド黎明(れいめい)期の段階に差し掛かり、今まさに海のデジタル革命が花開こうとしている。

 ここ数年、衛星通信を介して運航・機関状態のビッグデータを収集、解析する船舶パフォーマンス管理システムが発達。日本郵船が「SIMS」、川崎汽船は「K-IMS」の各システムを運航船隊に導入し、商船三井も昨年10月、運航データ利活用プロジェクト「FOCUS」を始動した。

 18年春開始の中期経営計画のテーマに“デジタライゼーション&グリーン”を掲げた日本郵船の内藤忠顕社長は、「長い間、海運会社は船というハード中心の事業を続けてきたが、ソフトを使った差別化にも挑戦し、現状を打破しなければならない」とビジネスモデル革新への意志を示す。

 昨年4月に技術革新本部を立ち上げた商船三井の池田潤一郎社長は、「あらゆる業界がデジタルイノベーションを中心とした大きな変化の波にさらされている」と語り、「ICT(情報通信技術)をはじめとする新技術でストレスフリーなサービスを実現する」と意気込む。

■パラダイム挑戦

 自らを「デジタル技術の信奉者」と呼ぶ欧州プロダクト船大手マースクタンカースのクリスティアン・インガースレフCEO(最高経営責任者)は、日々激しく変動する用船マーケットの分析にビッグデータを活用している。

 「伝統的に海運業界のアプローチは、チャータリング担当者の洞察力を基に配船計画を立ててきた。当社はこの経験ベースの業界パラダイムに挑戦し、大量のデータ処理に基づくデジタルモデルを適用した『データドリブン型』のアプローチに移行している」

 同社のチャータリング担当30人は洞察力とともにデジタル技術を駆使し、19の異なるマーケットの今後12週間の推移を予測、最適な配船エリアを追求している。

 船舶管理でもフルデジタル化への挑戦が進む。

 欧州船舶管理大手コロンビア・マーロウ・シップマネジメントは、ドイツ航空大手ルフトハンザと次世代システムの開発プロジェクトを推進中。マーク・オニールCEOは「開発期間2-4年をめどにフルデジタルの新しいテクニカルマネジメント、クルー管理のプラットフォームを構築する」と構想を描く。

 「海運にはオフハイヤー(不稼働による用船契約の中断)というコンセプトがあるが、航空機の高稼働率からするとオールドファッションな考え方だ。船舶管理会社やオペレーターにとって、回避可能な非効率性の排除が重要なチャレンジになる」(オニール氏)

■シェアと透明性

 「未来においては、積極的にシェアし、透明性の高い企業が勝つと信じている」

 ノルウェーの名門ドライ船社トルバルド・クラブネスのアレクサンダー・ステンスビー最高デジタル責任者は、海運のデジタル新時代をそう見通す。

 同社は電力会社や鉄鋼メーカーなどの荷主とデジタルプラットフォームを構築し、原料・燃料在庫と船舶データを組み合わせた高度なサプライチェーン管理サービスを提供している。

 「われわれが展望する海運の未来は、すべてが一つのプラットフォーム上で一緒になり、そこで互いにコラボレートし、可視化されたワンソリューションでサプライチェーンを管理する姿だ」(ステンスビー氏)

 日本では昨年、海運、造船、舶用、IT企業など50社超が参加する海事産業データ共有基盤「IoS(船のIoT〈モノのインターネット化〉)オープンプラットホーム」が稼働した。船舶の運航データを共有し、革新的な技術開発・新サービス創出を目指す。

 日本郵船の内藤社長は「海事クラスターが企業の壁を超えてデータを共有・活用する枠組みであり、産業構造を一変させる可能性を秘めている」と期待を込める。

 金融分野での「FinTech」(フィンテック、Finance+Technology)に代表されるように、あらゆる産業が新テクノロジーによる変革を迫られている。本シリーズ「MariTech」は海運業界の技術革新の最新動向をリポートする。

 (次回から週1回、2・3面に掲載)