2019 日本コンテナ航路一覧
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 印刷 2018年10月09日デイリー版1面

川崎近海子会社OOC/台風からVLCC救助。AHTS「あかつき」、曳航1カ月間。防災面でも実力

VLCCを曳航中の「あかつき」(手前)
VLCCを曳航中の「あかつき」(手前)
救助活動のルートを説明する井上社長
救助活動のルートを説明する井上社長

 川崎近海汽船の連結子会社で海底油田の試掘・石油掘削設備(リグ)曳航支援などを行うオフショア・オペレーション(OOC、本社・東京)が東京湾沖での救助活動で活躍した。8月に猛威を振るった台風13号の途上、自力航行不能となったVLCC(大型原油タンカー)を、出動から修繕ヤードまで約1カ月間にわたり曳航した。国内最大のけん引力を持つAHTS(アンカー・ハンドリング・タグ・サプライ)「あかつき」の活動を報告する。(山本裕史)

■偶然重なり出動

 「今回、さまざまな偶然が重なり、『あかつき』がVLCCを曳航することになった」

 同船を保有するOOCの井上和男社長は、当時の状況を振り返りながら語った。

 事故の一報がOOCに入ったのは8月5日。東京湾口付近で航行していた海外船社運航のVLCCのエンジンルームで火災が発生。同船は約27万トンの原油を満載していた。

 東京湾を守る第三管区海上保安本部は、人命救助などの場合、消防艇や救命ヘリを飛ばす。しかし、航行不能となった大型船を曳航できる設備は海保も保有していない。

 「あかつき」は川崎近海汽船とOOCの合弁会社オフショア・ジャパンが発注、2016年に竣工した国内最大の曳引力を持つAHTS。

 AHTSとは、海底油田を試掘する掘削リグの曳航・アンカーハンドリング、掘削資材などを輸送する作業船のこと。「作業船とはいうが、石油・ガス採掘現場では必須の最高グレードの放水設備を持つマルチパーパス(多目的)船でもある」(同社の池田強取締役)

 「あかつき」はもともと、6日に横浜で資材を積み、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の地球深部探査船「ちきゅう」が停泊する静岡に向かう予定だった。

 しかし、台風13号の接近で同契約が解除となったため、急きょ東京湾口のVLCC曳航に向かうことができた。

 150トンのけん引力を持つとはいえ、果たして「あかつき」単独で満載のVLCCを曳航などできるのか。

 井上社長が説明する。

 「当社はオフショア業務を専門とする会社であり、常にサルベージに備え救助船を待機させているわけではない。しかし、今回のケースのように運航スケジュールに空きが出た場合は、緊急要請に応えることができるよう、できる限り出動態勢を維持している。国内では唯一、利用可能だった『あかつき』がVLCCへの緊急要請に対応できたのは、まさにこのようなタイミングに恵まれた結果だった」

 「最寄りの東京湾から出動できたことで、最短で本船を救助できたことには大きなメリットもあった。もし、救助船の到着が遅れ、台風の影響をもろに受けて本船が座礁したなら、大惨事になっていたかもしれない」

 本曳航作業の元請けである日本サルベージの技術者3人が乗船後、「あかつき」は清水船長以下乗組員15人を乗せ、6日午後2時に単独で救助に向かった。「あかつき」は巻き上げ能力300トンのウインチから繰り出される76ミリメートル×1500メートルのトーイングワイヤーをVLCCに連結して曳航を開始。愛知県渥美半島沖まで移動し、台風13号をやり過ごした。

 満載の原油を揚げ荷役するため、17日に京葉シーバースまで曳航した後、今度は中国舟山の修繕ヤードまで曳航することになった。

 20日、東京湾から本船の曳航を開始。しかし、再び台風20号が襲来するため、西方ルートを南西に変更し、八丈島-小笠原諸島間まで南下。その後、西方に向けて曳航するも再度、台風21号の影響を避け、奄美諸島から南西に転進。9月6日、無事に中国に到着した。実際の出動から完了まで、実に約1カ月にわたり「あかつき」はVLCCを支え続けた。曳航速力は6ノットを記録した。

■「飛躍」の可能性

 OOCは、旧東海サルベージの従業員を中心に1990年に設立されたオフショア船会社。石油採掘のサプライボート、試掘などの作業を行ってきた。昨年4月には川崎近海汽船が大株主となり連結子会社となった。

 現在、「あかつき」を含めて4隻のサプライボート、調査船1隻のほか、海洋資源調査などを行う機材を所有する。

 オフショア船は、北海油田がある北欧、東南アジア、西アフリカ沖で盛んな業務。なぜ、日本の海運会社がオフショア船を所有するのか。

 「オフショア船を持つことは、一つのチャレンジ。確立した市場もなくリスクもあるが、OOCが東海サルベージ以来、保持してきた日本船籍、日本人乗組員での運用技術を継承することが、日本の海洋開発に不可欠と考えた結果。だからこそ高いアンテナを張って、さまざまなチャンスに巡り会える。そこには着実な進歩がある」(池田取締役)

 「あかつき」は、JAMSTECの「ちきゅう」のサポートなどでも活躍しているが、今回は東京湾防災の観点からもマルチパーパスぶりを発揮した。日本の既存の海事産業の枠組みに収まらない可能性を秘めていることは確かだ。