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VesselsValue.com
コンピュータアルゴリズムで客観的な船価を瞬時に算定 VesselsValue.com 2014/10/21 18:00 日本海事新聞 AdオンNet

従来の常識をくつがえす新たな船価評価サービスが、いま海運の世界でじわり浸透している。2011年5月に英国でスタートした『VesselsValue.com』。外航船約3万隻の詳細データベースと独自開発のコンピュータアルゴリズムを駆使し、高精度かつ客観的な船価評価額を瞬時に弾き出すオンラインサービスだ。当初は懐疑的な見方があったこの手法だが、徐々に評価が高まり、現在では欧米・アジアの機関投資家、船舶所有者、オペレーター、監査法人、海事弁護士、保険会社、船舶ブローカーなどが利用している。サービスを提供するVesselsValue Ltdは、これが21世紀の最先端の船舶分析ツールとして認知されることを目指している。


リーマン・ショックが開発を後押し

2008年9月、米国の投資銀行リーマン・ブラザーズの破たんを契機とした世界的な金融危機、いわゆる“リーマン・ショック”が起きた。ほんの数カ月前まで史上最高の活況を呈していた海運ドライマーケットは大暴落。これに連動して、本来アセットとして評価されるべき新造船・中古船の価格も急落し、船舶の売買マーケットは事実上ストップしてしまった。

リチャード・リブリンCEOとアジア地区セールスマネージャーの阿部純子氏
リチャード・リブリンCEOとアジア地区セールスマネージャーの阿部純子氏
ロンドン郊外チズウィックにあるメインオフィス。アナリスト、セールス&マーケティング担当者など約15名が勤務
ロンドン西部チズウィックにあるメインオフィス。アナリスト、セールス&マーケティング担当者など約15名が勤務

『VesselsValue.com』の生みの親で、長らく中古船の仲介業を営んできたリチャード・リブリン同社最高経営責任者は当時の状況を振り返る。
「2008年9月から2009年2月にかけ、クラークソンなどの大手ブローカーが船価評価サービスを停止する事態に陥りました。船価が急激に下がっていくのを目の当たりにし、恐ろしくて評価を提供できない心理状態だったのではないかと思います。このとき、アルゴリズムによる客観的で誰からもプレッシャーを受けることなく船価評価を提供するサービスの必要性と、マーケットニーズがあることを確信したのです」(リチャード氏)

リチャード氏はこれを機に、以前から温めていた『VesselsValue.com』の構想実現を決断する。開発プロジェクトは自らが経営する中古船ブローカーSeasure Shipping Ltdのリソースを共有するかたちで進められた。

同サービスのシステム構築には2つの重要な開発課題があった。一つは船の明細データや取引情報、所有者情報などの膨大なデータを収集・入力し、精度の高いデータベースを構築すること。そしてもう一つは、流動的なマーケットにおいて各船の適正な市場評価額を日々算出する高度なアルゴリズムの設計。いわば『VesselsValue.com』の頭脳にあたる部分である。
「我々は船の評価額は5つの要素、つまり船型、船齢、積載容量、明細データ、運賃収入データにより説明されうると考えています。1日1回計算を行うアルゴリズムを構築するために5つの要素をモデル化したうえで、実際の中古船の取引データを用いてモデルを検証しました。さらに5つの要素と取引実績データの最善の関連を見つけるために回帰分析を活用。計量アナリストとソフトウェア開発者がチームを組んで検証作業とプログラム調整を繰り返し、約2年をかけてシステムを完成させました」(リチャード氏)

膨大な船舶データをあらゆる角度で検索

『VesselsValue.com』には現時点で3万2605隻の既存船と新造船(未着工・建造中含む)の詳細スペックと取引データが収められている。これらは非常に細かい分類と属性でデータベース化されているため、ユーザーはいろんな条件の組み合わせで船舶を検索することができる。このデータベースの設計理念と日々の品質管理こそが本サービスを支えているのは言うまでもない。
「中古船の取引データに関しては公式な登録簿など存在せず、売り手、買い手およびブローカーのネットワークを介してのみ情報が得られます。そこで我々はブローカーレポート、企業のプレスリリース、メディアなどから情報を収集、Seasure Shippingの経験値も活用し、それらを照合・検証することで、他に例を見ない情報量と精度を兼ね備えたデータベースを作り上げました。船価評価の自動化にはデータ収集および検証作業を高水準で保つ努力が欠かせません。船級協会、造船所、オーナー、ブローカーやその他ソースからのアップデートされたデータを毎日システムへ入力しています」(リチャード氏)

図1:上部が検索条件で下部が検索結果。条件は自在に追加できる。「remove」をクリックすると条件が削除される。
図1:上部が検索条件で下部が検索結果。条件は自在に追加できる。「remove」をクリックすると条件が削除される。
図2:個船データのトップ画面。タブを切り替えると詳細スペックなどを確認できる。写真は別サイトにリンクして表示される。
図2:個船データのトップ画面。タブを切り替えると詳細スペックなどを確認できる。写真は別サイトにリンクして表示される。
図3:マップ上に表示された本船位置。目的地と入港予定時間、船速、貨物なども確認できる(リアルタイムとは限らない)
図3:マップ上に表示された本船位置。目的地と入港予定時間、船速、貨物なども確認できる(リアルタイムとは限らない)
図4:検索できる船種と船型。さらにカーゴのタイプで細かく分類されている。
図4:検索できる船種と船型。さらにカーゴのタイプで細かく分類されている。

では実際に『VesselsValue.com』を使ってみよう。2012年に日本で建造されたハンディーバルカーで船級はNK、低速ディーゼルの電子制御エンジン搭載という条件で調べると10件がヒットした(図1)。船名をクリックすると、船舶の個別情報が表示される(図2)。黒文字の「23.9」という数値が当日の評価額で2390万米ドルを意味する。その右にある緑色の数値「3.0」は解撤価格だ。
 その下のグラフは、2007年以降の船価推移を表している。この船は2012年の竣工船だが、さまざまな条件から建造前の評価額を算定できるのもアルゴリズムの為せるわざだ。さらにその下には、同型船の過去の売買実績をリストで見ることができる。船のスペックは右のタブ「Vessel Details」に細かく記載されている。

そしてユニークなことに、個船ページの左上にあるマップアイコンをクリックすると、船舶自動識別装置(AIS=Automatic Identification System)の情報とリンクし、対象船舶の本船位置を地図上で確認できる(図3)。右側の小ウィンドウのタブを切り替えると、船のスペックや船価、過去の寄港履歴も確認することができる。

もちろん、調べたい船舶の船名やIMO番号が分かっていれば決め打ちで検索ができるし、オーナーやオペレーター名で検索すると、当該企業が所有する(新造船を含む)フリート全体の評価額も一覧できる。検索結果はExcelへエクスポートできるので、レポートなどへのデータ活用も可能だ。このほか、船齢・船種別の最新船価一覧、船種別の売買履歴とフリートリスト、新造船のオーダーブック、売買成約リストなど統計資料も充実している。

なお、検索できる船種の一覧は図4の通りで、さらに貨物タイプなどで細かく分類されている。ただし、スモールハンディーバルカーやシングルデッカー、客船など現時点では評価対象外の船型もある。また自動車運搬専用船(PCTC)が含まれていないが、将来的に対象を広げていく予定だという。

精度の高さがリピーターを呼ぶ

さて、気になる評価額の精度だが、『VesselsValue.com』では2010年1月以降の取引について、取引日前日の評価額と実際の取引額を比較し、差額の割合を算出したうえで標準偏差のグラフを公開している。
https://www.vesselsvalue.com/archive/accuracy.pdf

これを見ると、総取引数のほぼ9割がプラスマイナス10%内の誤差に収まっていることがわかる。既存手法による誤差を示す統計は恐らくないので比較は難しいが、少なくとも結果を明らかにしていることからも『VesselsValue.com』の努力と自信がうかがえる。
「仲介業者による典型的な船価評価では、直近の同型船の売買事例から経験値に基づき算出しますが、ブローカーの見解は日々変化しうるし、様々な要因により主観が入ることは避けられず、算定までに時間もかかります。変動するマーケットやビジネスのスピードの速さを考慮すると、瞬時に客観的なデータを提供するやり方のほうが現状のニーズに合致していると考えています」(リチャード氏)

『VesselsValue.com』はユーザーが希望する機能(モジュール)を組み合わせて購入できる。例えばタンカーの1セクターのみに関心がある場合、個船船価や関連情報を無制限に閲覧できるパッケージの利用料金は1アカウントで年間£5,250から。1£=170円で換算すると89万2500円となる。全セクターの全機能が使えるフルパッケージなら£15,750(同267万7500円)。パッケージでなくとも欲しいモジュールをチョイスすることも可能なので、そこは応相談だ。

今春、第2オフィスをワイト島に開設した。リサーチ、データ管理担当者など約15名が勤務する。
今春、第2オフィスをワイト島に開設した。リサーチ、データ管理担当者など約15名が勤務する。

サービス開始から3年半となるが、ユーザーのリピート率は95%という。更新の際にはモジュールを増やす、アカウント数を追加するなどのパターンが多いそうだ。日本市場には2012年1月から参入を開始した。
「だんだんとブランドが定着し、船舶関係の方々の間でVesselsValue.comの船価を話題にして頂く機会が増えていることを実感しています。日本ではメガバンクや地方銀行、証券会社、ファンド系の会社など機関投資家、船主や商社およびオペレーター、船級協会や保険会社などにご利用いただいています。また、マリナビを通した日本語による船価鑑定証明書の販売も今年6月に開始し、徐々に実績が出始めてきました」(アジア地区セールスマネージャー・阿部純子氏)

今後同社では、現在提供しているMarket Value(市場評価額)に加え、Income Value(将来の収益予想を加味した船価)を提供する予定で作業を進めている。Market Valueに比べ、船の資産としての価値をより表すものと期待される。
「常に新しい機能の追加、提供データの拡大に努めており、ニーズをいち早く把握してサービスを提供することを心掛けています。我々は海運業界における日本マーケットの重要性を良く理解しており、とくに日本のお客様からのフィードバックは欧米とは異なる点が多いため、影響力のある日本海事新聞社との連携も維持・強化しつつ、今後のサービス開発の貴重な判断材料にしていきたいと考えています」(リチャード氏)

文・大場伸二
Richard Rivlin    CEO 1954 生イングランドのワイト島出身。1976年からClarksonにて約7年間中古船のブローキング業務に従事した後、1983年創立者の一人として、Braemar Shipbrokersを立ち上げる。その後1993年に独立し、Seasure Shippingを創設し中古船のブローキングハウスとして主に、ギリシャとアジアのオーナー間の仲介を行う。2011年5月、VesselsValue LtdのCEOとして、世界ではじめてのオンライン船価鑑定サービスであるVesselsValue.comをスタートさせる。
Junko Abe (阿部純子)    Sales & Marketing 1978生千葉県出身。2001年4月早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、東海旅客鉄道㈱へ入社。入社直後の新幹線運転士としての現場研修などを経て、社員教育および財務(税務及び予算管理)業務に就く。2008年7月から2年間、企業会計基準委員会(ASBJ)へ出向し、会計基準の開発及びIFRSの日本語翻訳を担当。2010年6月東海旅客鉄道㈱退職。2011年9月King’s College LondonにてMSc International Marketingを取得し、2011年11月から現職。

マリナビ船価鑑定のご案内

日本海事新聞社は2014年6月より、VesselsValue.comのシステムを利用した船価鑑定証明書の発行サービス『マリナビ船価鑑定』を開始しました。同社の船価評価を日本語で入手できる唯一のサービスで、申し込みから納品(PDF形式)まで完全ペーパーレスでご提供しております。なお船価鑑定証明書は公式文書としてご利用が可能です。料金は1隻:75,600円(消費税込)。詳しいことは、マリナビ船価鑑定のオーダーサイトをご覧ください。

http://www.marinavi.com/content/vesselsvalue/

皆さまのご利用を心よりお待ち申し上げております。

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